『メディア・リテラシーの方法』、アート・シルバーブラット他著、安田尚監訳、リベルタ出版、
2001年刊、2800円

本書は、米国ミズリー州セントルイス市ウェブスター大学でコミュニケーション・ジャーナリズムを専門とする著者が、メディア・リテラシーにかんする応用的研究の成果としてまとめたものである。構成は以下のとおり。「第１章　イデオロギーを読み解く」「第２章　自分史から読み解く」「第３章　非言語的表現を読み解く」「第４章　メディアの中の神話を読み解く」「第５章　メディア制作の技法を読み解く」。本書では、メディアは構成されたものであるという前提のもとに、イデオロギー・自分史・非言語的表現・神話分析・メディア制作の技法の視点からメディアを読み解く多様なアプローチを提供しようとしている。各章には、分析のための枠組みが述べられ、章の最後には、まとめ／結論として、その章の主要な要素が箇条書き疑問文の形で並べられており、具体的かつわかりやすい構成になっている。ただ、いくつかの章に提示されている具体的な分析例、「『イングリッシュ・ペイシェント』のイデオロギー分析」（第1章）や「『ER』と『シカゴ・ホープ』の神話分析」（第４章）などは、簡略化されすぎた「小論」となってしまっており、分析例の参考とするにはややものたりない感を抱かせる。
本書は、全体として理論をふまえつつも具体的で実践的なメディア・リテラシーのアプローチを示したハンドブックとして、その特徴を示しているといえるだろう。
−『fctGAZETTE』No.76（2002年３月）掲載−