FCTメディア・リテラシー研究所 Japan Media Literacy Research Institute
『メディア・リテラシーを学ぶ人のために』鈴木みどり編、世界思想社、1997年刊
メディア・リテラシーを日本で初めて理論的実践的に解説した本が、世界思想社から発刊された。FCTはメディア・デモクラシーの実現をめざして、長年にわたってメディア・リテラシーの実践と研究を積み上げ、フォーラムの開催、報告書の作成などを通じて、メディア・リテラシーをより多くの人に広めることに大きな力を注いできた。こうした活動のなかで、メディア・リテラシーということばがこのところやっと市民権を得つつあるが、「メディア・リテラシーについてのきちんとした日本のテキストがほしい」という声は会員の内外からよく聞かれるものだった。そうした声に応えて、本書は鈴木みどりが編集し、FCT会員の執筆により、2年あまりの歳月をかけて完成された。
I部の理論編では、理論と実践の統合をめざすメディア・リテラシーの研究領域の形成とその展開がグローバルに概観され、先駆的な研究者レン・マスターマンの論文も収録されている。II部の実践編では、日本でメディア・リテラシーに取り組んでいる様々な領域の実践記録を多様な執筆者が分担している。III部は行動編で、世界各地で活発化しているパブリック・アクセス運動と日本でのメディアに対する市民の行動を紹介している。
様々な分野の市民活動、社会教育講座、大学・教育などメディア・リテラシーの取り組みの場で、実践の手がかりとして活用してほしい1册である。
目  次
時代の要請としてのメディア・リテラシー
I部
第1章 メディア・リテラシーとは何か
第2章 メディア・リテラシーの基本的な枠組み
第3章 グローバルに展開するメディア・リテラシーの取り組み
 ―目的・価値観・そしてスーパーハイウェー
II部
第1章 メディアは現実をどう構成するか 
―阪神大震災テレビ報道の〈今日の一日ドキュメント〉分析
第2章 報道と人権 
―「松本サリン事件」報道を検証するメディアの分析から
第3章 テレビCMのジェンダー分析 
―映像言語と価値観を解読する
第4章 テレビ・ドラマとマイノリティ市民 
―「障害者」の問題を中心に
第5章 子どもはテレビをどう読んでいるか
第6章 マスメディア・ソフトと高校生
第7章 インターネットをどう使うか ―メディア・リテラシーのアプローチ
III部
第1章 アメリカのパブリック・アクセス・テレビ
第2章 世界に広がるコミュニティ・ラジオ運動
第3章 コミュニケートする権利と女性 
―北京「世界女性会議」が提起したもの
第4章 カナダにおける「子どもとテレビ」政策への取り組み 
―「多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会」報告への疑問を出発点として
資料 レン・マスターマンの18の基本原則/分析シート/放送法
鈴木みどり編『メディア・リテラシーを学ぶ人のために』(世界思想社、1997年、305頁、定価2300円)
−『fctGAZETTE』No.62(1997年7月)掲載−
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